最近、BLEACHが余り面白くない。これは何故なのか、ちょっと考えてみる事にした。
■1)「破面」の孕む問題点
先ず、尸魂界編は突出して面白かった、という前提がある。これは賛否両論あるとは思うが、基本的にクリーチャーバトルが主眼であった初期、BLEACHは其処まで評価されていなかったと思われる。否、小気味のいいコメディや、ZOMBIE POWDER.の頃から継続していた「ノリ」などがまだ続いており、評価されているベクトルが朽木白哉、阿散井恋次来襲前後でまるっきり変わっているので一概には言えないが。そして、尸魂界編が「ウケた理由」は大きく分けて三つあると思う。一つ目は、クリーチャーバトルから「対人バトル(厳密には死神だが些事なので補足せず)」になった事。死神とはいえ、人間同様に「馴染み易い」キャラクタが敵になる事で、敵役にも人気が出た事。二つ目、「斬魄刀」という「異能武器」という、ジャンプの王道設定が追加された事。そして三つ目、「護廷十三隊」という階級、及び組織の存在。こういったファクタはことジャンプ層には受けが良い、というのは昔から不変である。
そして、破面編になって、この構造に歪みが生じる。グランドフィッシャーが最初に敗走した時点で、破面の設定はあったのだろう。しかし、尸魂界編にて対人バトルが余りに受けてしまい、結局グランドフィッシャーは「不完全」と切り捨てられ、一心に打ち据えられる。そして、「完全体」と称されたウルキオラとヤミーの登場で、クリーチャーバトル方針は捨てられた、かと思われた。だが、エドラドの斬魄刀開放による「帰刃」で、対人とも対クリーチャーとも云えぬ中途半端な位置付けになってしまった。そして、曲がりなりにも隊長である日番谷の卍解ですら、限定解除をしないとギリアン出身のシャウロンに歯が立たないというパワーインフレーション現象も相俟って、バトルがどうにも大味になってしまっている(パワーインフレは尸魂界編後半で既に顕著になっており、その延長線上にある為にそれに拍車がかかってしまっている)。
階級制度は「十刃」や「従属官」というモノが設定されており、これは意識的に設定したものと思われるが、これの抱える問題点は後述する事とする。
また、死神(や、その斬魄刀)は総じて日本的名前であったのが、破面は総じて西洋的な名前になった事も理由の一つと挙げられるだろう。日本の漫画である以上、和名が馴染むのは当然である。ただ、この点に関しては尸魂界という「世界」の設定上の不可解さ(現世の魂を管理する世界なのに、何故日本的な世界の上、日本人ぽい人間ばかりなのか、という前提上の不可思議な点。海外の人間が魂葬されるとどうなるのか?という点は未だに詳らかとなっていない。まぁ、砕蜂のように中国風の死神もいるのではあるが)がまだ完全に解明されていないので何とも云えないが、全員がいきなり横文字の名前ばかりになり、とっつきにくくなった、というのは否定出来ない事実であろう。
■2)ザエルアポロの罪
さて、そして次の問題点だが、この作品の現在の「売り」であるバトルがどうにも大味なのだ。大味であり、冗長なのだ。
まず一つ目だが、「虚閃」の存在である。これはDRAGON BALLでもそうだったのだが、こういう力押しの遠距離攻撃が台頭し、徒にバトルの大雑把さを演出してしまっている。弓親もシャルロッテとの戦いでこの「虚閃」に愚痴っているが、正にその通り。死神の使う鬼道は、詠唱や番付などにより、矢張りジャンプ読者に人気のあるジャンルのものであった以上、この大雑把さはどうしたものか。
そして、以前であらば二転三転するバトル展開はこの作品の「味」であったのだが、それが逆効果となるバトルが発生する。VSザエルアポロ戦だ。十刃では下から二番目でしかない彼とのバトルは、遭遇からマユリ様の勝利で幕を閉じるまで実に42話も費やしている。特殊能力を得る「帰刃」で、ザエルアポロは「敵の複製を作成」「臓器を支配する」「食らわれた場合、対象を支配」「再誕生」などの多様過ぎる能力を持ち、また解析により攻撃を無効化、従属官を食う事でダメージ回復など、余りにいたちごっこな冗長なバトルを展開している。同時進行で掲載された他のバトルが織り込まれた事を考慮しても、この一戦は聊か冗長すぎる。そして、このザエルアポロ以降、シーソーのようなバランスのバトルが連続する事になる。グリムジョー戦に続いて突如乱入したノイトラ、ウルキオラの二段解放など、「実は○○でした!」というまるで隠し芸のような引き伸ばしが行われ、爽快感が著しく損なわれている。そういう意味で、マユリ様を始め、朽木白哉、卯ノ花烈、更木剣八の虚圏突入が無ければ、展開的に破綻していた可能性すらある。
■3)脱却出来ない死神人気
上記のように、結局死神を動員しないと、話がどうにも大味である、という展開が続き、現在はレプリカの空座町上空でのバトルとなっている。隊長及び副隊長揃い踏みとなり、結局死神で持っている作品である、という事が露見してしまった。私は何度と無くスタークの名前を忘却するほど、破面に対して余り興味が無い(例外的に、ハリベルの従属官、スンスンだけは好き)。
そして「過去編」。過去編と銘打つからには、藍染の事に至る動機なども判明するのかと思いきや、結局は「仮面の軍勢」の生まれた理由、浦原喜助周囲の現世への追放という顛末のみの内容であった。藍染の強さや目的などについては、未だに不鮮明なままであるのだが、それは今後の伏線へ通じているものとしてさて置く。仮面の軍勢が須らく死神の隊長格であったという展開は、それまでの鬱屈したシナリオに比べ、格段に面白かった。それは逆に取ると、破面編のシナリオが如何に面白くないのか、という事を浮き彫りにしてしまっていると思える。
そういう意味で、死神が常時登場する現在のシナリオはある意味待望ではあるのだが、この期に及んで卍解すらしない隊長達はどうなのだろう。
■4)散在する不可解な事態、矛盾点
まず、これは誰もが思った事であるとは思うが、出来損ないであろうと、ギリアンの破面であるディ・ロイを瞬殺したルキアが、何故連載第一話であの程度の虚に後れを取ったのか。これは結局展開上の都合で初期との整合が取れなくなったと考えてしまう他は無い。
だが、それ以上に現在の破面の情勢は腑に落ちない点が多い。
先ず、十刃という組織はかなり昔からある、という点が触れられているが、一心と喜助は「藍染が崩玉を手にした事で破面の完成度が飛躍的に上がった」と発言している。シャウロンがNo11である以上、他の十刃はそれと同時期か、或いはそれ以降に破面として誕生した大虚である筈である。そう考えると、崩玉を手にして間もない藍染がそれだけの短期間であれだけの破面を生み出したという事になり、十刃という組織が余りに出入りが激しいのか、或いは只の矛盾なのか、判別がつかない。だが、それだけの短期間で、あれだけの破面を統率出来るだけの座に藍染が就けるとも思えない。尸魂界から藍染が去る際に反膜を用いているという事は、護廷十三隊時代から幾度ものアプローチを行っていたと考えるのが妥当ではあるが、では崩玉無しでそこまでクラスの高い破面を生み出す事は可能なのか?という最初の疑問に戻ってしまう。十刃の統率具合からしたら、それなりの支配期間は存在していた筈である。この点はいずれ解明されるのか。
……とまぁ、簡単に現状での感想を書いてみましたが、それでも毎週読んでしまうBLEACH。だが、ルキアの義骸フラグが判明したのがコミックス20巻台に乗ってからという事があった以上、全てが詳らかになるのはもっと先の話なのかも知れない。あと、mixiでの嫌いなキャラスレでは織姫がほぼ独走状態。連載初期の織姫はボケボケで可愛かったのだが、確かに最近の織姫はちょっと、何ていうか、可愛くない。
●そう云えば夜一さんもとんと出て来ぬな。しがらみがあるのかどうかは知らぬが、彼女がいるだけで戦力は大幅に変わるであろうに。否、砕蜂が腑抜けになるので戦力ダウンになる可能性もあるな。出なくて良いのかも知れぬな。
カラブリ+―BLEACH OFFICIAL BOOTLEG (ジャンプ・コミックス)
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