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コミカ・アーカヰヴ'07Mar#6

■今月買った漫画、青年誌(講談社)及び大判・ムック編。
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るくるく#7/あさりよしとお
電気すら通わない家に住む貧乏少年、鈴木六文。そこに悪魔がやってきた。メイドさんと案山子の。親父は天使に殺され猫となり、かかる天使は仏門に下り、悪魔は六文と共同生活…と書くと意味不明ですがあさり氏の漫画っていつもこんなんでしょ(笑)(まぁ、「まんがサイエンス」から入ると違和感あるだろうなぁ)独特のタッチ、独特のテンポでゆるゆると流れていく日常。本作の骨支として「天使対悪魔(アーマゲドン)」のぐだぐだ版というのも勿論あるのだが、メインテーマは「温故知新」と考える。というか只の懐古主義か…「貧乏」というそれだけで世界の潮流から残された世界で、古き日の娯楽を紹介していく。竹馬やらゲルマニウムラヂオ(これは本巻より前のエピソードだけどね)など、嘗ての大衆娯楽、言い換えて過去の遺物をほのぼのと振り返る。本巻では「六文クンも青春だねッ!」みたいな展開や、映画の妙味を知ってしまったが故のるくはの浪費っぷりは「解る解る!」とシンパシーを覚えられる。下劣な御神体を巡ったほのぼの急転直下地獄絵図みたいな爽快なストーリーシフトは見事と言うべき。あとはなんでこんな可愛いタッチの漫画のオビに作者の写真を使うのかなー!ってとこですね(笑)いや、あさり氏に責は無い。漫画は顔で描くものではないのです(遠い目)。

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バガボンド#25/井上雄彦/吉川英治
武蔵vs伝七郎。嘗ては武蔵が辛酸を舐めた相手であるが、ただ京の道場にて研鑽を励んでいた「だけ」の伝七郎は、結局死線を幾度も超えてきた武蔵の相手ではなかった――。そして吉岡一門による壮大な「仇討ち」は幕を開け。本作には何人も無骨な武芸者が出てくるが、吉岡伝七郎ほど心を集めた武人は何気に初めてではないだろうか。無骨であり、強くあり、優しい。しかし、武蔵には勝てなかった。散る男、進む男、停滞したままの男――。本巻には佐々木小次郎が回想でしか出て来なかったが、斯く言う「巌流島」とは、本作でいかほど後になって記されるのだろうか。井上雄彦の劇画としての本作の完成度は今や何をやいわんやですが、最終的に「巌流島」へ至るまで、又八がどのようなポジションを確保するのかが実は楽しみ。武士道からすれば「決闘」は即ちタイマンである。又八はそこに入り込めるのか。

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ドキばぐ#4 3年B組ヒゲ八先生編/柴田 亜美
オビにもある通り、無為無策とも言える著者、柴田亜美の現段階での最長編となってしまった本作。多作で多忙であり、なおかつ暴虐無人な立ち振る舞いでありつつも連載が続いているのだから凄い。担当のオザワくんもこんな扱いながら連載当初から一貫として担当を続けられているのは脱帽せざるを得ない。逆にオザワくんは柴田亜美を扱えるからこそエンターブレインに居られているのでは?と邪推すらしてしまう。登場人物も総じてゲーム界の偉い人ばかりなのだが、柴田亜美の手にかかればそんなヒエラルキーは木端微塵に崩れ去り、出版社の社長だろうが(浜村通信が社長になるだなんて当時予想だにしなかったょ…)ソニックの偉い人だろうが(というかもう準レギュラだね中さん)ネタにしかされない。まぁ大半は捏造だとは思うんだけどね。これが捏造じゃなかったらどうしよう。そんな阿鼻叫喚荒唐無稽なゲーム業界。ゲームショーに写るんです片手に特攻なんていう懐かしい展開は最近余り無く、どちらかというと引き篭もり漫画である。かと思えばアポ無しでゲームメイカーに突入するなどこの人はアクティヴなんだかネガティヴなんだか未だに解らん。画風も他の連載では滅多にやらない超ディフォルメから宮下あきら調、本宮ひろ志調、そして定番となってしまった能條純一調など、逆に他の連載のような画風が出るだけマシである。そんな漫画ももう10年。連載当初に生まれた子供がもうタミフル使えないんですYO!そんなケオティックな陰惨電子遊戯絵巻。前置きが長いですが本巻もご多分に漏れず面白いです。だけど、本作→他作への読み手の移動はまだ許容範囲内ですが、逆ベクトルはほぼ無理なのでは、と思えるほどの疾走具合。どうせなら「G(ゲー)セン場のアーミン」から読み始めてはいかがかな?(注:柴田亜美女史のファミ通処女作。このあと「ジャングル少年ジャン」の連載に至るが、途中から「番外編」と称した「ドッキンばぐばぐアニマル(つまり、現在の「ドキばぐ」の原型。やってる事はほぼ同じ)」に完全に乗っ取られ、番外編として3巻発行した後、改題して現在に至る)

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となりの801ちゃん/小島アジコ
「僕は28歳、オタク会社員。付き合ってる彼女が腐女子でした。」――以前にも言及したような気がするけど、ここ数年のヲタクサブカルチュアのマイノリティとしての市民権獲得はこう、ヲタクやって(ピー)年という私からすると妙にむず痒いものがあるのですが。本作はヲタクカップル(そして度々登場する珍妙な生物、801ちゃん。元々商店街のマスコットキャラでありながら、「やおいちゃん」などという名前を付けられたが故にヲタク女子の概念の具現化したものとして本作では扱われてしまっているのですが)の最近乱立気味である「あるあるネタ」とは一線を画している。生々し過ぎるのだ。前述したような生ぬるいあるある4コマは、いい意味でも悪い意味でも一般向けとして鑑賞に堪える。だが、本作はどうか。一応、要点は注釈が付けられているが、その注釈の意味する本質は結局同族、ヲタクにしか理解できない。極論すれば、本作はヲタクか否かを見分ける「踏み絵」である。作中でも「攻め」の対義語は?という「踏み絵」的な話が登場するが(解:パンピーなら「守り」、ヲタなら「受け」)、実質本作はそれ自体で、読者が完全にヲタクベクトルを持つか否か解ってしまう。私はもう反論すら数年前に放棄した自認ヲタクなので面白かったですが、果たしてパンピーにこれは受けるのだろうか…801ちゃんじゃないんだけど、もうヲタクって別の生き物じゃん?(いきなり自己否定かよ)本作はそんな「ヲタク」が一般人と分かり合えるか?というポイントで見ると逆に面白いかも。だって注釈あってもこのネタのディープさは…(主人公はオタクって書いてあるけど、見た感じほとんどパンピーだと思うし)あと、残念な点としてはほぼ全作ラフな作画である事。元々はブログの連載漫画だったらしいんだけど、ネットはそれで別にいい。でもさ、出版するんならせめてペン入れくらいして当然じゃね?とは思うんですが。これは私が漫画描く側の人間だからそう思っちゃうだけ?

…今月も今日で終わりなんだけど、またえらい数の漫画買ってるなぁ私…しかも全部紹介してないし。とりあえず残りは改めて後日。ていうかね、一冊で数日分のネタになりそうな香ばしいのも混じってるので…)

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