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漫画ラヰブラリ9-1

嗚呼とうとう消化し切れずに9月突入。ぼちぼちレビュっていきまする。

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餓狼伝#18 夢枕 獏/板垣 恵介
私は原著のノベルスを未読なのでコミカライズとのギャップは存じませんが、本巻は北辰館トーナメント2回戦、ボクシングのチャックvs寸止め空手の神山から。そして2回戦最終試合、姫川vsサンボ・仁科と続き、とうとう準決勝、プロレスの長田と北辰館の雄・「羆」工藤が相対する。格闘モノにありがちなトーナメント編ですが、「グラップラー刃牙」の地下最大トーナメントとは違い、こちらは空手中心のミックスドマッチ。しかし本職の空手家である選手は続々と失せ…フルコンタクトを謳い上げる北辰館のトーナメントで、寸止めで勝ち抜く男もいれば、プロレスで勝ち上がる者もいる。所謂極端な技というものが無く、血生臭いリアリティが全面にプッシュされる本作、恐らく現在横行するバトル漫画では一番「生々しいほどのリアリティ」を体感できる作品。結局のところ、「闘争」とはオビから抜粋するこの言葉、「さァ、闘ろうぜ……。こいつァただのブッ壊し合いだ。」に集約されると思われる。スポーツ、武士道、健全な肉体。奇麗事を並べたところで闘争の根源は「破壊」である。それは本巻収録後に連載された鞍馬vs片岡戦において語られる訳だが、ここでは範疇外の為割愛させて頂く。

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エクセル・サーガ#16 六道 神士
今迄ショッカーの怪人並に無為無策な侵略活動を行っていた秘密結社「アクロス」だが(無為無策であったのは実行部隊のダメっぷりが原因の大半ではあるのだが)、前巻より本格的な表立った活動を始め、じわじわと侵略を成功させていく。一方で凋落する蒲腐博士及び市街安全保障局の面々。こと蒲腐博士の落ちぶれっぷりは憐憫の情を隠せない程。権力というものが如何に人を強くするか、逆に言うと権力を失ったとき何が残るのか、余りに極端なケースではあるがこういうもんなんだなぁ、と妙に納得できる。一方でやり手社長と成り上がったエクセル、及び記憶を失った照葉ことエクセル?の、いずれか一方は何者か?まぁラストでなんとなく読めるけど社長の方はアレなんでしょね。まぁそんな小難しい事を並べましたが、アクロスの侵略が着々と進む為に、初期のドタバタ的なネタは減少したものの、随所に挿入されるマニアックかつヤバいネタは健在。裏表紙読んで気付いたが、本巻に一切登場しないメンチ、彼(彼女?)は果たしてどうなっているのだろうか。

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HolyBrownie#4 六道 神士
六道神士もういっぽん。概要は神の使いであるピオラとフィオが様々な事象平面に於いて人助けをする一話完結モノ…なのだが、六道神士の本領発揮で只で済む訳が無く、大抵はロクな結果にならない(まぁそれでも結果オーライなケースも多いのだが)。随所に挿入されるヤバいネタはエクセル・サーガの比ではなく、お色気…というよりはもうストレートにエロスも混入。個人的にアー○ードを持ってきて大爆笑。氏の漫画は同人の方もかなりキていますが本作はナニゲにそっち方面にベクトルが近いかも知れない。エクセル・サーガでは物足りん!ダイテンジンのようなブッ飛び具合は何処!という諸兄にはオススメでする。

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まほらば#11 小島 あきら
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まほらば#12(完) 小島 あきら
多重人格少女、梢と、彼女が大家を務める下宿「鳴滝荘」へやってきた少年、白鳥のゆるゆるしたほのぼのラブコメ、完結。一癖ある住人、一癖ある知人、そして一癖ある他人格。それぞれが渾然一体となり、到達したハッピーエンド。絵柄やストーリにそぐわないほどのブッ飛んだギャグとかもあり非常に面白い作品でした。「多重人格(乖離性同一性障害)」はどうにもデリケートな問題のようで、TVアニメ化の際は設定をいじられたようですが(結局原因は宮崎某被告だと思うのだが)、ダニエル・キイスの「ビリー・ミリガン」シリーズよりももっとほんわかした感じの人格統合。しかし「彼女達」は消えるわけでは無く…あとはラストを見て頂ければ。絵に描いたようなハッピーエンドではありますがいいじゃん、絵に描いたもんなんだからね。

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最強伝説黒沢#9 福本 伸行
ギャンブル漫画で一目置かれる作家・福本伸行が描く、一見普通のおっさん漫画。しかし実際にはこの作品は福本の「人生論」と思う。前巻の際、「現代の時代劇」と評したが、本巻中にて黒沢は「侍」と表現されている。その通り、本作は「水戸黄門」や「暴れん坊将軍」などに代表される、「普段は冴えないが最後はビシッと決める人情英雄時代劇」の現代版であると私は思っている。自分の人生を否定せざるを得ない「現実」を突きつけられて悲嘆に暮れる男が、本巻に於いてはホームレスを護る為に立ち上がる。「追々「最強伝説」の意味が分かる」と作者自身が発言している通り、黒沢は望む望まざるに関わらず、英雄になりつつある。オチが毎回ついてしまうような英雄ではあるのだが。黒沢の言は全く持って正論であり理想論である。本人がそれを体現出来ていない為にオチがついてしまうものの、9巻に至り、着実に「最強」への歩みは確かなものとなってきている。

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BLEACH#23 久保 帯人
想定外の破面の襲来、そしてそれに対する死神達。エドラド・リオネスに追い詰められた斑目一角はとうとう奥の手「卍解」で対するが…どうにも破面編に突入してからパワーインフレに拍車がかかってきて、一角までもが卍解する。そのうちルキアも卍解しかねないな…相変わらず「コマの魅せ方」や「キャラクタの造形」なんかは流石と言える出来なのだが、このとりとめのないパワーインフレをなんとかしないと、と思ってしまうのはお節介だろうか。まぁ性質上「駆け引きバトル」ではなく「ガチンコバトル」である故の已む無い結果だとは思うのだけれど。しかし、バトル以外の話しの作り方は相変わらず良いので先が気になります。席官候補から外れていたとはいえルキアが強すぎたのにはちょっと…って感じですが(弱いとはいえ破面を倒すほどの実力者が、第1話で一護を庇うという理由であの程度の虚にやられるものなのか…?)。連載の方の展開もまた目まぐるしいですが、たぶん普通に死神が加勢するんでしょうね(笑)まぁ死神は兎も角仮面の軍隊は普通に加勢しそうですが。

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アイシールド21#20 稲垣 理一郎/村田 雄介
三位決定戦で辛くも関東大会に出場した泥門デビルバッツだが、関東トーナメント初戦は大会9連覇中「神」神龍寺ナーガ…かつては天才・阿含抜きで王城に勝利しただけあり、本巻最終項ではヒル魔ですら諦める程の圧倒的差をつけられる。果たしてここからの巻き返しは泥門に可能なのか?そして今迄出場できなかった雪光は果たして救世主となり得るのか?話は益々ヒートアップしていきますが、連載の方を追いかけてないコミックス読者としては先が気になりすぎる…現3年のキャラが濃いだけに敗退はなさそうな気はしますが(そういう読み方もどうかと思うけどね)、「天才を努力したものが打ち負かす」というジャンプの王道をこのまま進むのか?往々にして天才は嫌な奴として描かれますがこの金剛阿含は図抜けて嫌な奴だねぇ…

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魔人探偵脳噛ネウロ#6 松井 優征
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魔人探偵脳噛ネウロ#7 松井 優征
知人と話したのだが、「家庭教師ヒットマンやムヒョとロージーはまだしも、ネウロが連載続いているのはなんでだろう?」と。前回も書いたことなんですが、「ネウロ」はストーリで真向勝負している、最近では珍しいタイプのジャンプ漫画である。正直絵はあんまり上手ではない(独特の「魅せ方」は把握しているのだが)。まぁよく言えば「味がある」なのですが。探偵とついているものの、犯罪のトリックはそこまで変化球なものはなく、最近のミステリのように込み入ったものではない。しかし、本作は読んでみてから評価すべき作品。「探偵」とつくもののそれはほとんど「飾り」であり、ストーリの主軸は奇矯な登場人物の織り成す爛れたギャグである。前回も書いたけど「マトモな奴がいない」。故にブッ飛んだ話、ことギャグセンスは一目おける。ギャグと言ってもボーボボのようにあからさまな直球ではなく、素っ気無く出される変化球という感じ。マリーンズ渡辺俊の超アンダースローのように意表を突いて現れ、ツボに入るとかなり効く。一応現段階でコミックス化されているストーリで、ネウロvsX(サイ)の直接対決は一応決着する。しかし、ネウロも認める超「人間」のXは結局「何なのか」?話はまた暫く迷走する。女子高生探偵・桂木弥子を引きずったまま。

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