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コミカ・アーカヰヴ'07Mar#2

今月買った漫画、青年誌編。
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新ブラックジャックによろしく#1/佐藤秀峰
何が「新」なのか?と思ったらプラットフォーム移籍だったのね(モーニング→スピリッツ。どうやら編集サイドとモメたらしい)。インターンの斉藤先生が今回席を置いたのは泌尿器科。泌尿器科て云うと普通の人には縁がなさそうなイメージがありますが、老齢になると意外と関わってくるケースが多いジャンルだったりします。壮年男性なら前立腺肥大症や前立腺癌、中年以降の女性なら漏尿、頻尿など。「尿」に関する主訴は、現場にいると意外なほど多いのです。それはさておき、今回中心となる人物は、今迄のシリーズでも度々登場した看護士・赤城さん。斉藤は赤城を想い腎移植を薦めるが…これはこの漫画通してのテーマでもあるのだが、改めて「治療する側」と「される側」の思考のギャップが浮き彫りになる。極論してしまえば、「医療」というのは「リスクを最低限に抑える行為」なのだけれど、これが患者側からするとそれを鵜呑みにして同意出来ない、というケースはかなり多い。癌告知なんかは最たるもので、告知を受け入れ、向き合える人もいれば、告知に絶望し、生きることを止めてしまう人もいる(タイトル繋がりで手塚治虫「ブラックジャック」から引用すると、「告知された事で自殺してしまうような弱い人間はどちらにせよ生き残れない」的なブラックジャックの発言がある。正論だがそれは飽くまで医療関係者の域を脱却できていない極論である)。そのような「医療」の孕む問題点を指摘していくのが本作であり、「天才医師が難病に立ち向かう」という従来に有り勝ちだった医者漫画とは一線を画している。患者の心境に同調してしまうと治せる病気も治せない。このようなジレンマを、今後医療界は如何にして歩み寄っていくべきか。逆に、治す事は本当に患者のためなのか?そういう根本的な問題をこれからも描いて欲しい。意識改革が必要なのはなにも患者だけではない。医療関係者もそうなのだから。

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蟲師#8/漆原友紀
時代設定は皆着物を着ているような古き日の日本がモチーフ。森羅万象の礎とも言うべき「蟲」をテーマにした一話完結モノ。眠らない男、閉鎖された雪山、意識を流す娘、雨を呼ぶ女、死を自然に帰すモノ。古き日本では「妖怪」などとして畏怖されるような様々な現象を引き起こす「蟲」、そしてそれを追う「蟲師」ギンコ。幻想的であり懐かしいこんな世界。科学万能とされてはや幾年の現代、こういう世界を描けるのは稀有。「八百万の神々」の国である日本と対比する事で、要はあらゆる現象に宿るとされた「神」を「蟲」へと置換したものなのだが、その変幻自在多種多様な「蟲」のアイディアは毎回読み手を飽きさせない。大人になった少年少女に是非とも読んで頂きたい幻想世界。
余談ですが、「AKIRA」の大友克洋監督が実写映画化するそうで。昨晩TVCM観たけどそれなりに面白そう。あと、短編集出たときに初めて知ったんだけど、漆原友紀先生→元常連ローディスト・志摩冬青さんだったのね。云われてみれば絵同じだもんねぇ。なんで気付かなかったのかな(笑)確か志摩冬青名義で昔ラポートから単行本出してたと思うので、ファンは探してみるのもいいかも。

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喧嘩商売#6/木多康昭
本巻はかなり評価が分かれている。木多読者が「いじりネタ」、「マジの漫画」どちらに期待を寄せているかで変わってくる。前者であれば本巻はやや物足りないとは思う。それでも、相変わらずの冨樫批判や、とうとう対象に加わってしまった赤松先生など、強烈な業界批判は相変わらず。中でも今回評価出来るのは途中に出てくる背景の「売国党」。少なくともここまで露骨に特定アジアに(ネタとして)矢を向けた講談社漫画は初めてではなかろうか。これがいくらダメな事をやり続けても評価される「木多康昭」という漫画家のポイントだと思う。タイトル「喧嘩商売」は、深読みすると「業界に喧嘩を吹っ掛ける漫画家と言う商売人=木多康昭」とすら思えてしまう。酷い言い方をすれば、本作の「本筋」である喧嘩よりも、木多氏のそのスタンスに対してカタルシスを感じてしまう読者は少なくないだろう。一方、「マジ漫画」として、本巻は「喧嘩」描写の割合が多く、今回登場した喧嘩ジャンキー・工藤の、生々しい生い立ちからその強さまで、「これ本当に木多康昭?」と思えるほど力の入った描写がなされている。そして対する主人公・十兵衛は喧嘩ならではの搦め手で工藤に相対する。結果、状況はイーブンで次巻へ。この決着はどうなるか。そしてH×Hはいつになったら連載再開されるのか。期待は尽きない。

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