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コミカ・アーカヰヴ'07Mar#5

■今月買った漫画、集英社・秋田書店版(青年誌&月刊誌)。
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ハチワンダイバー#2/柴田ヨクサル
ちなみに1巻と一緒に購入。タイトルからは全く「将棋漫画」だとは気付かない。最初に言っておくけど、私は将棋に関しては「素人」である。駒の動かし方、最低限のルール(詰み、二歩など)くらいは知っている。「それだけだ」。本作はプロになる夢破れて賭け将棋で生きている男「菅田」が主人公。つまり「真剣師」の話。真剣師となり182連勝・無敗を誇る彼はその「乱獲」から相手が居なくなり、人づてに聞いた女性、通称「アキバの受け師」と対局――敗北する。発奮の為に部屋の片づけを依頼した所、やってきたのはメイド姿の「アキバの受け師」だった――。繰り返すが、私は将棋に関しては素人同然である。プロ棋士の投了図を見ても「なんでこれで負けちゃうん?」としか思えない。そのプロ棋士を描いた能條純一の名作「月下の棋士」は盤面を極端にクローズアップしながらも、棋士同士の思惑、人間模様を読ませる、素人にも「面白い」と言わせる迫力のある作品だった。これが「"静"の将棋漫画」の骨頂であるのなら、本作は「"動"の将棋漫画」である。本作には盤面や局面を描写するシーンがかなり少ない。それでいながら、「将棋でしか語れない」"棋士"という人間を生き生きと描写している。奨励会やプロ棋士のリーグ戦なんかは、強い棋士と次々と対戦するなんてのは当たり前の話。しかし、「真剣師は違う」。ストーリ中でも語られているが、将棋のプロアマを隔てる壁なんてのは途方も無く高い。よく言う「アマ名人」なんてのはせいぜい強くてもB級程度。プロのA級(=A級リーグの覇者が名人との対局権を得られる。要するに名人戦の予選とも言える)なんてのは想像を絶する天才どもなのである。「月下の棋士」はそんな異常とも言える天才の競演だった訳だが、本作はその天才に「なり損ねた」男の物語。よって、相手はみな一癖ある「アマチュア」ばかり…。もう一度言う。私は将棋のズブの素人だ。それでも本作は面白いのである。

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キン肉マンII世 究極の超人タッグ編#7/ゆでたまご
当初は「週刊プレイボーイ」というどう考えても旧キン肉マン世代を狙った二代目商売でしかなかった「キン肉マンII世」。原著「キン肉マン」も品が無かったが、プラットフォームは別のページを捲ればおヌードが平気で掲載されている本に連載された「II世」はその敷居と共に品の無さもアップグレードし、独自路線を貫く。しかし、途中から旧作を踏襲するストーリー展開へシフトチェンジする。そして、超人オリンピック復古、新世代悪魔超人編もどうやら好評なうちに幕を閉じた。そして、本作「究極の超人タッグ戦」編は更に旧作を踏襲し、タッグトーナメント編に突入するが、「存在を抹消されかかったケビンマスクを救う為」、新世代超人を「実際にタッグトーナメントが完結した直後」、即ち'80sの日本へタイムスリップさせるという荒業…というより強硬手段に出た。もはや読者は須らく旧作信奉者と断じての展開。逆に言えば、これほど旧作ファンに対しておいしい事はない。あの熱狂的ブームを巻き起こした「キン肉マン」の、公式アナザーストーリーなのだから。さて、本巻では万太郎・カオスのマッスルヌーヴォーvs地獄のカーペンターズ(新キャラタッグ)戦から、新旧ハイブリッドタッグ(ロビンマスク&テリー・ザ・キッド)のジ・アドレナリンズvs鬼哭愚連隊(新キャラタッグ)にかけて。カオスの正体はもうなんていうかダダ漏れなんですが(相変わらずゆでは伏線の張り方が下手である)、ロビンの最初のグダグダ具合はちょっとげんなり。当初から万太郎たち新世代超人をいぶかしむ「後の伝説超人達」(ことキン肉スグルの強情なまでの反発はどうにも旧作のイメージが重ならない)の中でも知性派なだけあるロビンは、「未来の息子」であるケビンの姿にただうろたえるばかり。かの「バラクーダ」として知性と厳格さを兼ね備えていたかつての「ロビンマスク」の面影が残念ながら余り無い。連載の方では老練としたネプチューンマンなどの「旧作のカッコよさを残した」キャラがいる中で、思ったより旧世代超人に魅力がない。まぁ、今の所噛ませ犬の新キャラコンビと新世代超人ばかりが出場しており、スポットが当たっていない為かも知れないが(結局本作には間に合わなかったが、ブロッケン&ジェロニモの「テガタナーズ(この名前もどうかと思うが…)」の扱いはあんまりなものだった。さんざ逡巡していたビッグボンバーズ(スペシャルマン&カナディアンマン)を大活躍させるくらいの発奮をして欲しかったものだが…まぁ、ビッグボンバーズの「その後」を描写してくれただけで往年のファンとしてはプラマイゼロなんですが(笑))…と言うといいとこナシのようですが、冒頭で書いた通り、往年のファンにとっては「これはこれで!」とも思える。ゆでの傑出した所としては、読者投稿キャラクタの利用方法が非常に優秀な所。前作もそうなんですが、本作も主たるキャラはみんな読者投稿。しかし、そのキャラの「技」や「戦い方」などを非常に上手く考えて作っている。「こんなの強いワケないじゃん」みたいなキャラが平気で強い。地獄のカーペンターズの「プラモマン」なんかは顕著な例。どう見ても雑魚の癖に、プラモであるポイントをこうまで発展させるものか(ステカセキングとシステムが同じなのはナイショだ!)。まぁカーペンターズは突っ込むとしたら「どこがバイキングの末裔なんだよ!」という所であって。つまり、ゆでたまご作品はそう楽しめ、という事なのですょ。

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聖闘士星矢EPISODE・G#11/車田正美/岡田芽武
これもまたジャンプ黄金時代の作品の二世作品なのですが、こっちは星矢が活躍するより前の話。主人公に獅子座のアイオリアを据え、アテナと対する「神」ティターン神族と黄金聖闘士とのバトルをメインとする。数回同じ事を書いてる気がするけど、本作は「黄金聖闘士の面体復古」。旧作では「聖闘士は同じ攻撃を二度食らわない」という途中から導入された免罪符を盾に、劣勢→最終的にはなんとか勝つというスタイルが殆どだった(まぁ、主人公が最下級の青銅聖闘士であった事を考えれば上出来なのではあるが)。しかし、本作の黄金聖闘士は「強い」。とてもじゃないが、将来青銅聖闘士に遅れをとるとは思えないほど強い。原著を普通のRPG(徐々に敵が強くなる)とすれば、本作はボス同士のバトルみたいなものである。前巻終盤から出てきた魚座のアフロディーテのまぁ強いこと。ここまで強いと逆になんか嬉しいよ(笑)で、単身クロノスの居城に乗り込んだアイオリアだが、突如現れた「神」ポントスの圧倒的なまでの強さに圧される中、同胞が助けに現れる。旧作の威を借りた二世作品とは一線を画し、圧倒的な画力で描かれる、別作品として評価できます。

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シグルイ#8/南條範夫/山口貴由
「仇討ち」として、公式な場で対決することになった旧門弟、「藤木源之助」と「伊良子清玄」。双方、異形の剣術で相対する。師・岩本虎眼の敵を討たんとする藤木と、己の目、愛する女を奪われた復讐心、及びそれをも野心の踏み台とし迎え撃つ伊良子。コマ送りの如き戦いながら、その迫力、スピードは物凄い。これは「BLEACH」や映画「MATRIX」などでも多用された表現だが、敢えてスローモーションにする事で更なるスピード感を表現する。しかし、本作は爽快さとは無縁の作品である。血生臭さ、残酷さ。原著が「残酷モノ」の走りである故に、どこまでも血生臭く、泥臭い。逆にそこに燃える。アニメ化も決定し(WOWOWとはいえ、本作の魅力を十二分に映像化できるか?と言えばどう考えてもコード的に無理だと思うので、個人的にはOVAなどのフォーマットにして欲しかった)、決着に向かい疾走する竜虎二匹。本作にて山口は自らの新境地を開拓し(連載以前より本作の執筆を熱望していた辺りからその意気込みも伺える)、結果として「覚悟のススメ」以降パッとしなかった氏の、二度目のヒット作にして最高傑作となったのはもう疑う余地は無い(なお、覚悟のススメは愛蔵版がリリースされ始めたので、興味のある人は是非ご一読頂きたい。「シグルイ」の原型であり、当時のチャンピオンの最先鋒であった本作の魅力は筆舌に尽くせない。歴史考証にやや難ありだが、それでも傑出した作品である)

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ジャイアントロボ-地球の燃え尽きる日-#1/横山光輝/今川泰宏/戸田泰成
少し前のエントリで、ジャンRがチャンピオンREDに移籍したらRED購入決定なのに、と申しましたが、本作でかなり購読に揺らいでいる。「ジャイアントロボ」と言えば故・横山光輝の代表作であり、特撮の名作であり、そして「稀代のアニメ監督」今川泰宏の本領発揮となった超名作アニメと、ナニゲにアトムなんかとタメを張れるのでは?と思われるほどの古き日の名作である。で、今回のコミカライズは監修に今川泰宏とあるだけあり、OVAの補完的な物語となっている。そして作画は「スクライド」などでマニアックな人気を誇る戸田泰成。
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このアルベルト様の「え、荒木飛呂彦先生?」と一瞬思ってしまうくらいの特濃のオヤヂフェロモンだけで552円+税の元はとったと思った(笑)で、ストーリーはアニメでは故人であったBF団十傑衆・幻惑のセルバンテスvsこちらも結局二人しかアニメには出てこなかった国際警察機構の「九大天王」総出演なんてドリームカードがストーリー初っ端から組まれるなど、アニメのファンにとってはこれだけでもう傑作です。セルバンテスの能力によるミスリードで、大作少年のポジションが判明するのは本巻のラストになってようやく。ただ、これはセルバンテスの能力によるパラレルワールドとしての設定の為か、アニメで回想にあった「幼い日の大作&ジャイアントロボvsセルバンテス&GR-2」といったシーンは無い。また、銀鈴はキャラメイクがかなり変更され、「オトナの女性」から「おきゃん(死語)な女の子」へイジられている。個人的には本作の「お銀」ちゃんの方が親しみ持てるなぁ。かわいいし(笑)ロボの造形も「原作版をモチーフにした」とあり、アニメのがっしりしたデザインより、比較的すっきりした感じになっている。さて、アニメでの引きとして残された「GR計画」とは一体何か?連載の先が待ち切れない。…マジでRED購入開始しようかなぁ…

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