先日、本サイトに『刀剣乱舞(とうらぶ)』が牽引する日本刀ブームに関する記事が掲載された。強引な論理展開で日本刀とネトウヨ思想を結びつけ若者の右傾化を憂うというありがちな文章だ。
記事を読んでみると、刀剣ブームは浅薄な歴史認識がベースになっているから危険、ネトウヨと根っこが同じということらしいが、そもそも歴史認識が浅薄な人間がすべて歴史修正主義やネトウヨ思想に走るわけではない。日本の歴史をまったく知らないまま素朴に戦争反対を口にする人間もいるし、逆に歴史の真実に目を背けたまま「反日死ね」「在日は出て行け」と差別的言辞を叫ぶ人間もいる。それだけのことだ。
だいたい、知識が浅いのはこのライターの方だろう。刀剣の歴史をきちんと検証もせず、たんに靖国神社や右翼が引き起こした事件に登場するというだけで、右翼思想の象徴と決めつけるのは妄想としか思えない。
「日本刀」というアイコンがネトウヨの薄っぺらい自意識を掻き立てると述べているが、他人の自意識を心配する前にまずは自分の文章の薄っぺらさを心配するべきだ。
あげく、美少年のアナロジーとして日本刀に萌えている『とうらぶ』ファンにまで「アブナい」とカラむ始末。いったい『とうらぶ』の設定や構成のどこに右傾化の要素があるのか。
こんなヨタ記事に対して「日本刀は平安時代からあったもので短絡的に戦後右翼と結びつけるのは......」「刀剣乱舞は日本刀の精神性がどうこうという話ではまったくない」などとマジレスしてくれているネットユーザーの優しさには逆に感動すらおぼえるほどだ。
しょっぱなから同じサイトに掲載されたとうらぶ+ネトウヨ話を一刀両断。ではこのライターはさぞかし実のある話を書くのかと思いきや。
だが、サヨク界隈ではこの記事に限らず、こういう短絡的な決めつけをしばしば見かける。たとえば、ミリタリーオタクを右傾化の表れなどという論調もそのひとつだ。
実際はミリオタと言っても、第1回十字軍に参加した貴族たちの動向を1日単位で把握しようと資料を読み漁る戦史系ミリオタから、軍服や銃器が好きでソ連軍の軍服やモデルガンを揃える装備系ミリオタまでその種類は様々だ。戦艦や戦車に機能美・造形美を見出すタイプの兵器系ミリオタにとっては国家のイデオロギーや思想など知ったことではない。むしろ戦争をしたら大事な兵器が壊れてしまうので戦争反対を唱えるミリオタは珍しくはない。
そういった実情を把握せずに若者の間でミリタリーファッションやら軍事シュミレーションゲームが流行っているのは社会の右傾化を示す兆候だと叫ぶおっちょこちょいは小バカにされても当然だろう。
1ページ目までは比較的まともな事を言っている。
だが、これが『艦隊これくしょん』となると、話は別だ。少なくともアニメ版『艦これ』を見る限り、サヨクの偏見や妄想とはまったく関係なく、その底流に歴史修正主義があると考えざるをえない。
『艦これ』アニメの基本設定は在りし日の軍船の魂を持つ「艦娘」たちが人類から制海権を奪った「深海棲艦」と戦うというもの。深海棲艦は基本的に意思疎通が不可能なエイリアンという設定だが、しかし、作中で戦闘になる戦場の多くは旧日本軍が太平洋戦争で戦った戦場と同じだ。ストーリーも何故か太平洋戦争をなぞっていく。そのうえで、史実とちがう展開がところどころに入り、歴史上では大敗したミッドウェー海戦をモチーフにしたと思わしき戦闘で大勝利してしまうのだ。
まず、とうらぶはゲームを前提にして非難している一方、提督勢からも微妙扱いされている(特に脚本面)アニメ「のみ」で判断を下している辺り、このライターが非難しているとうらぶライターよりも掘り下げが甘いといきなり分かる。
「歴史上では大敗したミッドウェー海戦をモチーフにしたと思わしき戦闘で大勝利してしまうのだ。」
ミッドウェーが歴史的大敗なんていうのはバカでも知っている。それを単に史実どおりになぞり、一航戦二航戦撃沈そのまんまにしてどうするの。これで相手が連合軍そのものと誤認しているのならまだしも、前文で深海棲艦についてきちんと明示している。要は、同じモチーフを用いた「ファンタジー」だという事を根本的に理解していない様子。そういった偏狭な見識は後々にも文章のあちこちに出てくる。
第3話の「W島攻略作戦」はウェーク島攻略作戦をモチーフにしており、実際の戦争で沈んだ戦艦と同じ名前の艦娘が海に沈む。轟沈の仕方は異なるものの、これは歴史に沿ったストーリー展開だった。
だが、第7話からは史実から微妙に外れ、日本にとって都合の良い展開が始まる。轟沈したはずの艦娘が沈む描写もなく大破しただけで終わり、また史実では日本海軍の暗号は解読されこれもミッドウェー敗戦の原因の一つと言われているが、このアニメでは暗号が解読された事態に備えようとする。
また初めて日本本土が空襲されたドーリットル空襲を再現したと思われる鎮守府への直接攻撃でも、建物が壊滅しただけで艦娘からは負傷者はまったく出なかった。
そして第11話・第12話(最終回)になって、艦娘たちは「強い力」によって何故か第二次世界大戦と同じような行動をとってしまうのだが、主人公の吹雪の行動は「定めの軛」に抗うことができるという設定が明かされる。敗戦へのターニングポイントになったとして有名なミッドウェー海戦を再現した戦闘で、一度、艦娘たちが負けそうになったところに主人公たちが駆けつけ、欠乏していたはずの物資が急に湧き、本来ミッドウェー海戦に参加できなかったはずの艦娘の修理が間に合って、歴史ではその2年後に就役するはずの大鳳が登場。犠牲を出さずに完全勝利するのだ。
この人は、要は「太平洋戦争をモチーフにするなら史実どおりに負けろ」とでも言いたいのか。バケツが急に余裕が出来たという点は確かにいきなり過ぎるご都合主義にも思えるが、終始姿の見えなかった提督がこの作戦の為に日本各地の鎮守府に協力を得る為に東奔西走していた、と好意的に解釈する事も可能といえば可能だ。大鳳の参戦に関しても、ファンタジーに史実の時系列を無理やり結び付ける必要もなかろう。野球ゲームやロボットゲームなどのような「IFのオールスターゲーム」という至ってシンプルな、昔から幾らでもあった設定を何故艦これだけ無視する必要がある?
以上が『艦これ』アニメの流れだが、そこからはどうしても、負けた戦争になんとかして勝ち、敗戦の記憶を塗り替えようとする意志が伝わってくる。
伝わりません。日本人はそこまで馬鹿ではないし、艦これ関連で戦史などを見ていけば、幾ら技術面で卓越した兵器を作れた日本であれ、連合国軍の圧倒的な物量に敵わない程度すぐに分かる。それに、IF戦争で勝ったとしてもそれは飽くまでIFでしかないし、現実の大日本帝国敗戦という事実が塗り替えられる訳が無い。
かつて第二次世界大戦を舞台にした仮想戦記という自己慰撫的なジャンルが流行した時期があった。現実の歴史を知る現代人が第二次世界大戦前にタイムスリップ又は記憶を保ったまま転生して日本を勝利に導いたり、一隻で艦隊を滅ぼせる架空の超兵器やアメリカより先に開発した原子爆弾などを用いてアメリカを蹂躙し日本が大勝利するというのがお決まりのパターンで、まあ、まともな知性を持った人間なら1ページ読むのも苦痛になるような三流の愛国ポルノだ。
しかし、『艦これ』アニメにはこうした仮想戦記と共通する部分があり、実際、ミッドウェー海戦で日本が勝利するという先述した結末も、これら仮想戦記と共通している。
だから「艦これ」は太平洋戦争をモチーフにしているだけで、実際の太平洋戦争を下敷きにした架空戦記じゃねえっての。相手はクリーチャーだって何度言えば。そもそも、艦これに架空の超兵器なんて出てこないよ。
歴史を変えてでも第二次世界大戦に勝利したいという、この歴史修正の欲望ほど愚かなものはない。起こってしまった事実は変えようがないものであり、現代の人間が歴史を学ぶ上で重要なのは「なぜ当時の社会は誤った判断をしてしまったのか?」「同じ過ちを繰り返さないためにはどうすればいいか?」ということだからだ。そもそも歴史の流れを変えるというテーマに基づく物語を作るのであれば、なぜ第二次世界大戦という出来事そのものを回避しようという方向にならないのだろうか。国力の差を考えれば日本がアメリカに勝利する可能性など最初からなかったというのが常識的な結論だろう。
太平洋戦争を回避する物語。まぁ貴方が望むならそういう作品を書けばいい。超絶的に面白くないと思うし、そもそもそれでは艦これそのもののレゾンデートル否定である。あと、太平洋戦争回避って言うけど、日本は連合国側からの圧力に対し、打って出るしか無くなった戦争でもある。そうなると、太平洋戦争を起こさない物語というのは無条件に連合国側に屈して占領されるという話になるね。
それを後知恵で「あのときああしていれば勝った」としてプライドを維持しようとするのはまさに、歴史修正主義的発想としかいいようがない。
前述のとおり、ミリオタは政治や歴史認識などどうでもよく兵器そのものを愛している層も多いため、こういった史実を塗り替えようというストーリーは必ずしも求められていない。にもかかわらず、こんな展開になっているのは、作り手が「戦前の日本は素晴らしかった」「日本が敗戦したのは何かの間違いだった」と考えている歴史修正主義的思想の持ち主か、あるいは、そういう思想をもったネトウヨをユーザー層と想定していたからではないのか。
まず前提しとくけど、「ネトウヨ」という単語を用いるライターの文章は正直言って信頼性がまるで無いと断る。ネトウヨという単語は本来、朝鮮などの反日ネットユーザが愛国者を貶めるために作り出した造語である。つまり、「ネトウヨ」というレッテルを簡単に貼るような輩はそもそも、左翼や売国奴側の人間である。歴史修正主義者的思想というのも、このライターが勝手にそう断じているだけで、そもそも現在存在している艦これ提督250万人の何%がそんな層だと思うのか?それに、本気でそう思っているようなネトウヨ(笑)は、こんなライト感覚の美少女ゲーより、もっと実在した戦略兵器そのものを活用するゲームをやるのではないか?あと、前のほうでも書いたけど、アニメのストーリー、プレイヤーからは酷評されてるからな。
しかも、日本が太平洋戦争に突入していった時代の流れを「強い力」「定めの軛」と呼んでいるのも、太平洋戦争を「自存自衛の戦争」「大東亜共栄圏を作り上げる意義のある戦い」と叫ぶネトウヨのメンタリティそのものだろう。
また、戦争の悲惨さ、残酷さがまったく描かれていないところにも歴史修正主義との共通点がある。制海権を奪われたのならば物資が欠乏し、悲惨な状態のなかで戦闘をしいられるはずだが、『艦これ』アニメで描かれる生活には窮乏した所がまったくない。鎮守府への直接攻撃でも、民間人への被害はまったく出てこない(というか、そもそも民間人が出てこないのだが)。戦争の負の側面を一切描こうとしないのである。
大東亜共栄圏は兎も角、朝鮮と中国以外、あの戦争にマイナス評価をしているアジアの国はいないのだが。強いて言えば日本もだが。東南アジア各国に、どれだけの日本兵の慰霊碑があると思う?先日の天皇皇后両陛下が戦地だったパラオを訪問した折、何故現地民があそこまで歓迎したと思う?日本は結果的に、というか,負けるべくして戦争に負けた。しかし、その代わりに、当時欧米列強の支配する東南アジア各国を独立自立させたのだ。制海権を奪われているからこそ、艦これでは資源調達に艦娘を同伴させ、資材を運んでいる訳だし(これはアニメに描写が無い為誤解を受けても仕方ないが、一方でアニメのみの上辺で語っていると判断するしかない一点)。戦争の負の面と言っても、ゲームに民間人出てこないしなぁ。それに、戦争としての負の面と言うのなら、如月轟沈でどれだけの提督が落胆したか。轟沈したら生き返れない。艦これの大きな一点であり、多くの提督は嫌いな艦娘であろうと、轟沈を嫌悪する人が大多数。そもそも、戦争の負の面と言うけれど、お前は戦争の何を知っていると言うのか。終戦から70年。前にどこかで見たけど、「戦争は悲惨だったと言うお年寄りは沢山いる。じゃあなぜ悲惨だったのか?と問うと、明確な理由は出せず、ただ『戦争だから』という理由にならない回答しか返せない』という一文を思い出す。当時、「何故戦争で悲惨だったのか」、それを実際に明確な理由を知っていて、しっかり語れる層はもうほぼいないのである。無論、私も太平洋戦争の悲惨さなどは伝聞でしか知らないし、メディアが報じるパレスチナ問題や北朝鮮の軍国主義がまるで当時の日本そのものであった、という話の正誤を判断する実体験は無いのだ。実体験を持つ人以外が持つ太平洋戦争観は、ほぼ間違いなく、戦後GHQの敷いた自虐史論が根底にある。だが、インターネットで情報が簡単に手に入るようになり、メディアの報じる「嘘」に気付いた人々は、次第にその自虐から脱しつつある。それが気に食わない左翼は、「ネトウヨ」というレッテルを貼り、愛国精神をまるで犯罪かの如く攻撃する。話を戻しますが、そもそも、艦これは世界観は兎も角、時代設定が無い。だからこそ、艦これ世界が歴史修正主義者の語るような「太平洋戦争当時のストーリー」なのか、それとも完全な現代IF物語なのか、これは受け手に委ねられている。まぁ、伊168の台詞などから、前者はまず考えなくて良いとは思うが。
日本刀や『とうらぶ』ブームと右傾化は何の関係もないし、ミリオタ=ネトウヨではないということも確かだ。また、『艦これ』をプレイしているユーザーもそうだろう。しかし、だからといって『艦これ』というコンテンツにそういう思想が入り込んでいないわけではない。
擬人化美少女に萌えるのは大いに結構だが、萌えているうちに「日本が敗戦したのは何かの間違いだった」なんていう自己慰撫的思想にはまらないようせいぜい気をつけていただきたいものである。
(東池誠之)
はい、日本人は敗戦は敗戦と受け入れた上で、艦これを楽しんでいますので余計な心配です。あと、ここまで引っ張って何だけど、「日本が敗戦したのは何かの間違いだった→きっとこうなら勝てただろう→それがどうしたの?」なんですがね。70年も前の事をいちいちねちねちぶり返すのは隣の国だけで充分ですから。
●それでいて国は未来志向で行くべきとか噴飯モノの主張をするものである。某国大統領は日本の戦争を永久に許されないと言った上で、自国の犯した戦争犯罪は振り返らず未来志向で、という狂人の如き主張をしたくらいであるしな。