ちょっと間が開きましたが4月期新刊そのさん。
魔法先生ネギま! #14/赤松健
「ラブひな」の赤松健が世に問う少年誌ラブコメに対する一つの回答、それがこの作品だと思う。この巻ではまほら武闘祭その後。本巻で表舞台に立つ生徒は和泉亜子。キワモノ揃いの生徒の中では比較的、というより圧倒的に真人間な彼女であるが、このエピソードで文字通りのシンデレラになる。また、図書館探検部における夕映の、ネギに対する恋心とのどかに対する罪悪感のアンビヴァレンツにも決着。前巻までの武闘祭では少年漫画のひとつの雛形、バトルものをそつなく(というより最高レベルで)描き切った赤松氏は一転してラブコメを描き切る。得てして印刷状態の悪い週間少年誌に不釣りあいなほどの描写力で毎号進む展開はシナリオでも予断を許さない。「連載当初にキャラ設定は概ね完成していた」という言をトレースし、伏線はほどよく解消し、ほどよく引き、ぐいぐいと読者を牽引する。「絵」「話」を最高レベルで昇華させた、現段階で少年誌における漫画の中で最高レベルの出来になっている。只の「ラブコメ」「少年漫画」というカテゴライズにするのが失礼と思えてしまうほどクオリティの高い漫画。只のお色気漫画だと思って敬遠している人は非常に勿体無い。現段階でこれほど濃密な少年娯楽漫画はそうはない。
School Rumble#12/小林尽
「Rumble」は「ごろごろ、がらがら」という耳障りな音や、心地悪さを指す言葉であるが、この漫画では基本的に心地悪さはほとんど無い。一癖二癖ある高校生のめちゃくちゃな日常でありながらも。心地悪さを指摘するならば、読みながらも突っ込みを入れたくなるほどの個々の思惑ベクトルのすれ違い、思い違いの連続する点。けれども、それが無くなったらこの漫画が12巻も続く訳が無い。基本的にラブコメでもここまで思惑がめちゃくちゃな漫画も無い。ところが久しぶりに烏丸⇔天満の構図が復活。播磨、八雲ともどもまた乱数の中に投じられる事にはなる訳だが(笑)そんな、色恋沙汰のもどかしさを極端にクローズアップした(しすぎ、という意見もある)シナリオは一点に収束する日が来るのか。現時点ではブレイクショットの後に球が一向に減速せずにぶつかりまくっている状態。ただし、飛び交う球は確実に数を減らしている。一向に終息は見えないが、少しずつ、纏まりかかっているんだけどなんで引っ掻き回すかなぁ天満!(笑)それは兎も角、小林氏は表紙にここまで意固地に高野を使わないのは何故だろう。少なくともこの二束三文トリオが表紙を飾る本巻に至りつくづく思ってしまった。
サナギさん#1/#2/施川ユウキ
チャンピオンはつくづく個性的な漫画を輩出するものだ、と思うが、この「サナギさん」もかなり味のある作品。見た目は非常にほのぼのとした、むしろ童話系のタッチだが、扱う内容はかなりディープ。最近あまり無い「言葉で笑わせる」タイプのギャグマンガ。日々それとなく触れている事柄や言葉を必要以上に掘り下げる。そして大抵はロクな結果にならない(笑)文字をじっと見ていると、文字に対する認識があやふやになってしまう事象を「ゲシュタルト崩壊」と言うが、この漫画は人為的にゲシュタルト崩壊を引き起こさせるような作品。今迄なんの注意もせず使用していた言葉が一瞬理解できなくなる。それをほのかな快感に変えてくれる、そんな漫画。可愛い絵に騙されるな!だけど騙される事自体がどうでもよく感じられてしまう。家で一人でひっそりと読もう。