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深海娘図鑑#4:ナギナタシロウリガイ

●なんか絵のリハビリだった筈なのに主旨が意味不明に。
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ナギナタシロウリガイ/Calyptogena phaseoliformis Metivier
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さて、特殊な深海環境として、鯨骨生物群集、熱水噴出孔生物群集と語りましたので、もう一つの「湧水生物群集」をば紹介致しましょう。この環境は文字通り、深海の「湧き水」を中心とした生物群集です。
深海には「海溝」という場所があります。文字通り、海の溝なのでかなり深いです。そういう場所の出来方の一つとして、大陸プレートの移動があります。二つのプレートがぶつかる部分では、片方のプレートが下の方に潜り込んでいくので、そこは溝のようになります。これが海溝です。そして、プレートは潜り込んでいく時にいろんな有機物を巻き添えにするので、地下に有機物がいっぱい潜り込んでいきます。そうなるとそういった有機物は菌の働きなどもあって、メタンへと作り変えられていきます。こういった深海の湧き水には、こうして大量のメタンが存在するのです。深海のような高圧状態では、メタンと水が混じったものは白いシャーベット状になり、俗に「メタンハイドレート」というものになります。氷みたいですが燃えるという楽しい物体ですが、次世代エネルギー源としても注目される面白物体でもあります。
また、メタンは海水中の硫酸イオンと反応する事で、硫化水素を発生させます。ここで硫化水素です。熱水噴出孔と同じシステムがここでも発生するのです。こっちは水温が低いので、同じ様相とはいきませんが、一部の生物には、湧水と熱水噴出孔に共通して生きている子もいたりします。シロウリガイはその共通生物の代表格。種類もいっぱいいますが、大抵は体内に硫化水素を利用する菌を共生させて、半分くらい砂の中に埋まって生きています。地面の下に伸ばした足から硫化水素を吸収し、菌に与えて栄養を貰って生きているのです。
なお、硫化水素は酸素よりもヘモグロビンにくっつき易いので、人間にとっては毒ガスです。硫化水素を利用する子でも、酸素呼吸しますので、そのままでは死んじゃいます。なので、こういう子は血液、というか赤血球が特殊な形になってます。赤血球が巨大化したり、硫化水素専用の蛋白質を別途用意したり。
さて、ここでそんな子の一種、ナギナタシロウリガイ。この子は硫化水素を運ぶ別ルートを持っているのです。まぁそれでも、ヘモグロビンは持っているので、貝殻を開くとまっかっか。まっかっかな貝としては寿司ネタで御馴染みの赤貝がありますが、ナギナタシロウリガイは味はホタテっぽくて、とろりとして甘いらしいですが、一方で硫化水素臭いので余り美味しくはないそうです。味は兎も角、ナギナタシロウリガイはシロウリガイの中でもかなり深い海に棲む子です。6000mクラスの日本海溝沿いの湧き水区域にぐわーっと大群で棲んでいます。シロウリガイの中でも、特に深い水域に住む子達です。ただ、余り水圧が高いと、貝殻の炭酸カルシウムが海水に溶けやすくなるので、貝殻がとても脆いのです。深海艇などのアームで掴もうとすると、簡単にぺきょっと割れてしまい、ヘモグロビンいっぱいの血液がぶわっと広がる惨状になってしまいます。
また、ナギナタシロウリガイには、カイコウヤドリゴカイという真っ黄色のゴカイが寄生している事があります。このゴカイもかなり特殊な形態をしていまして、今でもさかんに研究されている謎の子です。硫化水素を利用する菌をはべらせている一方、他の子にも寄生されているナギナタシロウリガイ。懐が大きいのか、無頓着なのか、はてさて。

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●第四回にして早くも末期症状であるな。もう少し適当な奴の擬人化で留めておけ。

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