●JOJOノベライズ企画第二弾、vs西尾維新、OVER HEAVEN読了。んー、まぁ...なんつーか。内容はネタバレになるので項を改めて。
●まぁ、DIOは計算高いのであって、こまめな性格とは言い難いからな。ヌケサクを哀れむボスというのはナニである。
さて、前回の
上遠野浩平に続く、ノベライズシリーズ第二弾、前々からジョジョファンである事を公言して憚らなかった西尾維新による作品。主人公はDIO、そして、内容は第六部のプッチの行動原理であった「天国へ行く方法」。形式はDIOが残し、承太郎が焼却したノートの復刻となっている。なのだが。
何かが違う。天国へ行く、という方法へのアプローチ、その思い立った理由、それぞれについての記述と言うには聊か備忘録、回顧録という形式が過ぎている。DIOを一人称とした事で第一部と第三部をDIOの視野からなぞっているのではあるが、それが果たして「天国へ行く方法」を記述するに当たり、そこまで必要なのか？と思えてしまう。確かに、第一部でジョナサン及びジョースター家に対してあそこまで悪辣非道を貫いたDIOの行動を裏付ける、というのであればそれはそれでいい。だが、「天国へ行く方法」のノートは、そういうものではない筈だ。故に、第三部視点の経過報告や、第一部の回顧などは、結局のところ蛇足でしかない。無論、その方法論を確立するに当たり、ダービー兄弟やボインゴのスタンドを引き合いに出すというのは、成る程とは思える。だからこそ、他の部位が聊か蛇足に思えてしまうのだ。
前述の通り、飽くまで手記の内容を崩さない為、際立った盛り上がりに欠け、話は淡々と進んでいく。テーマは良いのだから、もう少し何とかならなかったのだろうか、という点が実に残念としか言い様が無い。西尾維新にしては、余りに平凡な出来なのだ。寧ろ、ファンである西尾「だからこそ」、冒険が出来なかったというのもあるとは思う。上遠野の作品は単体としてもファン向けとしてもいいように、専門用語にはちゃんと説明があった。だが、本作は「スタンド」などの専門用語は「承前」として説明は無い。つまり、完全にファン向けなのだ。だが、ファン向けとするには、結局のところ、本編の「解説」でしかない。目新しさ、西尾らしさが無いのだ。Amazonのレビューは余り参考にならないとはいえ、現在酷評が集中しているのは、強ちネガキャンではない、と言える。「DIOの奇妙な冒険」、と、「冒険」出来ていない。特に、屋敷に承太郎一行が突入しているにも関わらず、この手記をまめに更新しているDIOに、何やら酷い違和感を覚えざるを得ないのだ。西尾ファンとしても、JOJOファンとしても、聊か残念であると言わざるを得ない。
