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化物語(下)/西尾維新(作)VOFAN(絵)
先月発売の上巻に続き連続リリースされた西尾維新最新作。上巻収録作「ひたぎクラブ」「まよいマイマイ」「するがモンキー」がいづれも雑誌掲載作の収録版だったのに対して、本作は「なでこスネイク」「つばさキャット」二本、どっちも書き下ろし。二本でのこの読み応えは流石というばかり。相変わらず主人公・暦と各ヒロインとの掛け合いがメイン。文章ならではの高度なギャグが飛び交うのはまぁフィクションだから、いや、だからこそ。其故か、「なでこスネイク」のヒロイン、撫子は口が達者じゃないぶんトークは完全に駿河に食われてしまってまするな。ていうか駿河との掛け合いは楽しすぎる。ビバ・エロ女子高生。これもしかしてエロカッコイイって奴?(間違ってはいないがコンセプトが違う)で、二本目が猫に魅せられた究極の委員長・羽川翼となり、「あれ?彼女の筈のひたぎはどうした?」と思いきやその辺のアクロバチックなシナリオ展開は吃驚だ。しかし、ネタバレになってしまうので書きませんが、魅せられた状態の羽川…萌え。何気にみんな陰惨な環境に置かれているにも関わらず、そんな雰囲気はおくびにも出さずに健気に頑張っている。孤立した優等生、永遠に到達できない迷い子、獣の腕を持つスポーツウーマン、鱗少女、家族という他人と暮らす委員長。こんな土台を持ちながらもからっと笑える物語。あとちょいエロス。もしかすると西尾維新はエロゲのシナリオ書いたらとんでもない快作が出来るのではなかろうか。「きみとぼくの壊れた世界」にもあったけれど、寸止めエロ小説もいいんだけどもっとずばっとエロスが読みたい(笑)閑話休題。本作は後書きにて著者自身が「趣味で書いた」と嘯くだけあって、西尾維新の本領発揮とも言える。西尾維新ファンなら迷わず買いでOK(余談だけど、清涼院流水と西尾維新、やってる方向性がほぼ同じなのに、ここまで評価が分かれるのはここに尽きると思う。西尾は「遊び」でやっているのに対して、清涼院は「マジ」でやってしまっている。そこが決定的なポイントだと思う)。残念なことに当初予定されていた(らしい)主人公・暦がこの世界に身を投じる原因になった事件を扱った「こよみヴァンプ」は結局収録されず。戯言シリーズもそうなんだけど、主人公のエピソードを蔑ろにする(若しくは読み手に完全に委託する)手法はもうちょっとなんとかならねいんですかいね。戯言シリーズはまだいいとして、本作はそれがあればラストエピソードの重みも段違いだったと思うのですが。Amazonでの評価もあったんだけど、VOFAN氏は結局各エピソードの扉とジャケットしか描いてないんだよなぁ。澄んだ絵柄で嫌いじゃないので、もうちっと枚数こなして欲しかった(ていうか、下巻ジャケの羽川はかなりイイ)。しかし、来年1月から12ヶ月連続発刊予定の「刀語」シリーズは時代物ですか…竹氏とのコラボであるのはまぁ納得ですが、今迄の西尾著作が生き生きしていたのはやはり様々なパロディを挟み込む事が出来る現代劇であったから、と私は思っているので、なんかやや不安です。