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からくりサーカス#43(完) 藤田和日郎
「うしおととら」に続く藤田和日郎のヒット作、堂々完結。からくり人形、錬金術、サーカス等等様々なソースが絡み合って渾然一体となった文字通り「からくり」仕掛けのような壮大な伝奇ロマン。前回も書きましたが氏の作品における「捨てキャラ」率の低さは本当に感嘆に値する。しがないサーカス稼業の仲町サーカスの面々(一部を除き只の「芸人」でしかない一般人)すらも、最終決戦で見せ場を作って貰える。そして、元々は「フランシーヌ人形」を笑わせる事の為だけに存在した自動人形自身にすら笑いを齎せた。「他人の心境により急性の呼吸器発作を発生させる病=ゾナハ病」に始まった本作はゾナハ病の根絶という形で幕を降ろす。莫大な遺産を受け継ぎ、「健康で若い体」という理由から命を狙われ、この壮大なストーリに投じられた主人公・才賀マモル、ゾナハ病に罹患し、強靭な肉体を持ちつつも他人を笑わせる為に生き、最終的には冷徹な人形破壊者「しろがね」となった加藤鳴海、そして己の置かれた複雑怪奇な立場を知らされずに、舞台の中央に投じられたヒロイン・しろがね/エレオノール。この壮大な「からくり」を仕掛けたフェイスレスですらも最終的には舞台から降り、最後に訪れたのはカヴァー通りの笑顔。「フィクションであるならば最終的にみんなハッピーにならなければ嘘だ」というのは私の願望でもあるのだが、本作はそれを体現している。「サハラ決戦」から「マモル対フェイスレス」へのストーリのシフトチェンジが余りにも壮大なからくり仕掛けの為にやや順応するのが大変だが、よくぞここまで作り込まれた作品にできたものだ。流石は巨匠。

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MAR#14 安西 信行
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MAR#15(完) 安西 信行
一方で非常に残念だったのは本作。前回のレビューで「ARMを活かしたバトルに期待」「ウォーゲームまでは導入部だと思っている」という私の期待は結果として裏切られる事となる。最終巻にて作者自身が「子供向けに作った」と記載している通り、アニメやゲームにもなった。しかし、「子供向け=シンプル」という時代はもう終わっていると思う。本作は善悪や戦いというものが非常に単純明快に描かれているものの、それだけでしかなかった。「ARMの駆け引き」に関しては最後の方で少し用いられはしたものの、ウォーゲーム自体が作品の中核であった結果として非常に煮え切らない感じが拭えない。バッボのマジックストーン、最後の二つの使い方は恐らく当初から決めていた事なのだろうとは思うが、それにしてはラス2のほうはどうにもぱっと思いつきでしかない気もする。そしてラストは文字通り絵に描いたようなハッピーエンド。しかし、ファントムをそこまで駆り立てた思惑は一体「何だったのか」、唐突に現れた「キング」とその結末など、どうにも打ち切り臭い感じが拭えない。現在安西氏のアシスタント作画によりアナザーストーリ「ARMΩ」が連載開始したものの、第一話だけ読んだが後はスルーしている。矢張り安西氏の絵ありきだと思うので…

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魔法先生ネギま!#15 赤松 健
15巻となり、ネギその他「魔法使い」という「存在」自体の存在の危機が訪れる。発起人はネギの生徒であり、「未来人」超鈴音。所謂「巨大学園ファンタジー」というものが前から好きなせいもあるのだろうが、本作は現在週間連載中の作品で私が一番楽しみにしている作品である。只のお色気漫画と思われがちであるが、魔法詠唱にラテン語や古ギリシャ語などを用いたり(しかもきっちりと裏付けがなされている)、半2D作画(背景などは3Dモデリングされたものである)であるが故の、得てして印刷状態の悪い週間雑誌には不吊り合いなほど緻密な描写、そして魅力的なキャラクタ。練りに練られたプロットから起こされるは極上のファンタジーである。確か1巻購入時に「(あずまんが大王+ハリポタ+ぱにぽに+ラブひな)/4+α」という評価を下したものの、もう一つの「オリジナリティ」として完成している。「生徒の中にラスボスが!」という事を二枚がけでやられた時には流石に「やられた!」と思ったものです(1:エヴァ、2:超)。というか超に関しては第一話の名簿で既に超天才である事が仄めかされていたにも関わらず現シナリオに至るまでほぼストーリにノータッチであった事自体「何でだ?」とは思ってましたが。「キャラ設定は連載開始時にある程度固まっていた」と作者が語るだけあり、此処までは正に狙い通りの展開であったのだろう(ただ、恐らく刹那のキャラが非常に丸くなったのは人気投票の結果を反映しての事と思われる辺り、当初のプロットをごり押ししている訳ではなさそう)。個人的に、副産物的に仮契約してしまったハルナが凄すぎると思う(絵描きとして、ね)。現連載に於いても新参の仮契約者二人とも大活躍だしねぇ。果たして今週号で仮契約した「彼女」はどんなアーティファクトを具現させるのでしょね(笑)カモ君の構想と全く見当違いな、それでいて強力なのを望みます(笑)

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GetBackers#36 青樹 佑夜/綾峰 欄人
最終ミッションに入ってから既に巻数において8巻ほど経過しているようですが、それでもなお尽きない謎。本巻では殆どを「風鳥院」の二人に割いている。圧倒的な力を見せ付ける(というより、見せ付けるコマが無いほど圧倒的)夜半と、勝機を終に見出した花月。「伏線回収」しながら、というにしては余りに紆余曲折しているものの、じわりじわりとエピローグへ向かっているのは確か。予告からすると次巻ではとうとうあの「ドクター・ジャッカル」赤屍蔵人の「回収」へシフトする模様。ジャッカルファンとしては今から楽しみでありまするが。ただ、最近どうにも概念的なシナリオ運びが目立つような気がするので、ちょっと分かりにくいかなーとは思う。

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ぱにぽに#9 氷川 へきる
天才少女教師「レベッカ宮本≒ベッキー」と、それを取り巻く女子高生とよく分からない物体の織り成す究極のゆる漫画ももう9巻。実は諸事情により手元にコミックスがない為確認取らずに打ち始めちゃってますが(現在手元にない理由はまた追々後日記述します)、いい意味で「相変わらず」。メイドカフェの話のオチに爆笑した記憶が。ていうかなんかメイドカフェって嫌じゃないですか?いや別にメイドカフェ論はいいとして。そんな私でもメディアさん大好きだ!悪いか!(いや開き直られても)ていうか強盗の話のベホイミとメディアさんのシーンかっこよす。本当に強かったのね…

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聖闘士星矢episodeG#10 車田 正美/岡田 芽武
終にアイオリアは敵「ティターン神族」の居城に乗り込むが…これは本作のテーマでもあると思うのだが、基本的に原著「聖闘士星矢」に於いて強いとは云いつつも結果として青銅聖闘士に後れを取った「黄金聖闘士」の「強さを再認識」させる作品である。相手は「神」である。原著にても星矢達は幾度か「神」と対峙しているが、大抵の場合ギリギリの競り合いでの勝利である一方、本作の黄金聖闘士はやや圧されながらも対等に戦っている。それだけでも強さは分かろうと云う物であるが、岡田芽武のCGを用いた圧倒的な作画によりその強さは正に黄金の如く絢爛たるものに観える。本巻でスポットが当てられる黄金聖闘士は水瓶座のカミュと魚座のアフロディーテ。カミュは原著でも氷河との戦いでその強さにスポットが当てられたが、一方のアフロディーテは本作に於いてようやく「黄金聖闘士」たる「強さ」を描かれたような感じである。少し前にスポットを当てられた蟹座のデスマスクもそうなのだが、ここが「強さを再認識」と記述した所以である。最終的に冥闘士の尖兵にまで没落した両氏は「実は此れほどまでに強かったのだ」というのが分かっただけでも、往年のファンにはたまらない。今の所文句の無い漫画ではあるのだが、出来れば原著のようにティターン神族の纏う「楚真(ソーマ)」の脱着合体図解みたいなのも載せて欲しいなぁと。難しいかも知れないけど(黄金聖衣自体けっこうデザインいじられてるしね)。